昔、会社員だったとき、上司から小手先で仕事をするなとよく指導されました。小手先でやっていると、どこかで必ず行き詰まるという教えだったと思います。目先の結果ばかりにこだわっていると、本当に大事なものを見失ってしまいます。皆さんもビジネスでは大事にされているのではないでしょうか。

では、ゴルフでは小手先になっていないでしょうか。OBが怖い、ミスして焦る、結果を求めすぎる、こうなるとショットもパターもつい小手先になります。人の心は体に正直にあらわれます。普段は、下半身からドッシリと始動するのに、手先で打とうとしたりするのです。こうなると、自分らしいスイングからどんどん離れていきますし、大きなミスにつながっていきます。

小手先にならないために、しっかりと立って、下半身を使おうとすると、今度は別のところに力が入ってしまいます。これは思考で体の動きをコントロールしようとしている状態。意識している場所が違うだけでこれも小手先の動きの一種なのです。大事なことは、自然体で小手先にならないようにするにはどうするかということです。いかにメンタルと体を連動させるか。メンタルトレーニングの出番です。

坐禅の修行で坐禅を始めた当初、私はいい坐禅をしようと必死でした。しかし、無理に背筋を伸ばし、丹田まで深く息を入れようとすると、逆に息苦しくなります。どうしても上半身に力が入ってしまうのです。師匠に教えていただいたのは、自然に息が深く入る姿勢を作ることでした。まずは自分の体をしっかり地球に支えてもらうこと。坐禅で地球が感じられてくると、徐々に坐ることが楽になり、どっしりしてきます。その結果、自然に骨盤が立ってきて、深く息が入るようになるのです。頑張る坐禅には、限界があることを身をもって知りました。

剣道でも足の裏でしっかり地面を踏みしめることは大事なことです。でも、実は自分の足でしっかり立とう立とうとすると、逆にフラつくのです。そこで、地球が支えてくれるのを足の裏で感じてもらうと、力が抜けてどっしり感が増しました。

竹刀も同じです。試合で緊張すると、どうしても竹刀を強く握ろうとしてしまうのです。そうすると、普段はかかない手汗が出てきて、すべったりします。握ろうとしすぎると、逆に緩むのです。大事なことは、竹刀の固さを感じること、竹刀が自分の手を支えてくれているのを感じること。すると、スッと肩の力が抜けます。力を抜こうとするとのではなく、自然に抜けるのです。

これは、ゴルフでも同じです。アドレスして立った時に、自分の足で頑張って立とうすると、力みます。恐らくこの状態では地球を感じられていないですし、途中でフラついたり、力が抜けてしまいます。大事なことは、アドレスしたときに、地球が支えてくれていることを感じること。そして、フィニッシュまで地球の感覚を足の裏で感じ続けらると、体のバランスが非常によくなります。これは仏教でいう自力と他力がうまく融合した状態ともいえます。この心の状態をフィニッシュまで保てると、自然に身体の動きもスムースになり、小手先ではなくなります。

地球に支えてもらうメンタルトレーニング、ぜひ試してみてくださいね。