「テンション」と「モチベーション」は何が違うのでしょうか?似ているように感じる人もいるかもしれませんが、その質はまったく違います。モチベーションはどこまでも湧き出るエネルギーの泉です。

一方のテンションとは、心の糸が張っている状態です。意識的か無意識かはありますが、無理をして高いエネルギーを維持しています。遅かれ早かれいずれ張りつめた心の糸は切れてしまいます。そうすると、燃え尽きたり、一気にやる気を失ったり、人によってはうつ症状に陥ったりします。いつも、どこか追いつめられたような状態と表現する選手もいます。

また、テンションは一時的な結果で大きく左右されます。「100か0」「all or nothing」という極端な考え方になりがちで、思うような結果が出なかったり、一度のミスでテンションはガクッと落ちてしまいます。要は、「中間」がないのです。中間とは「いい塩梅」のこと。きょうは10時間練習したが、疲れてしまって次の日は休んだ。ある日は、すごく集中できたが、別の日は、まったく気持ちが入らなかったという状態は、テンションの反動です。

いいときはいいが、悪いときはとことん悪い。挑戦と無謀の差にも気づけないので、攻めるときと守るときのバランスが上手くとれないのです。これらは、テンションでプレーしている選手に共通している心の癖といえます。なので、私は選手たちにテンションを上げすぎないメンタルトレーニングをしてもらいます。

一本の大きな線を心に引いておくイメージを持ってもらうことで、今どれくらいテンションが上がっているか、あるいは下がっているか、確認しながら、プレーするのも有効です。18ホールを回っていると、どんな場面で上がったり、下がったりするのか分かるようになります。まずは、自分のテンションのアップダウンを知ることから始めましょう。ある選手は、トレーニングの後に「最初はすごく物足りない感じがしたのですが、アップダウンが減ることで逆にエネルギーが溜まるんですね。いかに余分なエネルギーを使っていたか気づきました」と話していました。

ちなみにテンションは心という海が嵐で荒れている状態です。嵐が収まると、心は静かになります。すると、自然に大きな海からエネルギーが湧き出てくるのです。モチベーションとは実は静かで穏やか、少々のことでは揺らぎません。どの人も海のように広く、無限のエネルギーを持っているのですが、ついテンションの方が手っ取り早いので、そちらに頼ってしまうのです。真の強さを身につけるには、一時的なテンションに頼らない静かな心を見つける必要があります。モチベーションは糸が緩んでいる感覚です。この揺るぎがあるから、心の糸が切れないのです。

まずは、テンションを急激に上げたり、下げたりせず、淡々とプレーすることを意識してみましょう。みなさんの本当の強さが見えてくるはずです。