ゴルフのレッスン書には、最後まで振り抜くことが大事と書かれています。これはある意味正しいのですが、実は逆効果の場合があります。それは、振り抜こうと意識することで、力んでしまい、逆に最後まで振り抜けなくなるケースです。力任せに振り抜くことと自然に振り抜けることは違います。振り抜けるかどうかはあくまでスイングの結果であり、そのために自然に振り抜ける心と身体の状態を作れるかが大事です。

そのために、前回もお伝えした「半分の力」でスイングすることが大切です。プロとのメンタルトレーニングでは、半分の力で振ってみてというレッスンをするのですが、調子が良くないときには、最後まで振り抜けないのです。どこかに力みが入っているので、スイングが途中で止まってしまうのです。まずは、半分の力で振ってみて、自分の力みに気づくことがこのレッスンの目的です。

ゴルフだけでなくどのスポーツでも、人はつい力みます。もっと飛ばしたい。もっと正確に打ちたい。理想や目標があるから練習を頑張るのですが、これは同時に力みになっていきます。力みが常態化していくと、いつしか力みからスイングを作るようになっていきます。身体に力が入っているので、さらに力を込めないと振れなくなっていくのです。これは、刺激の強いものを食べ続けているようなもの。辛いカレーを食べていると、すまし汁の味は分からなくなります。刺激に慣れると、繊細な感覚を失います。そして、刺激物はさらなる刺激の強さを求めます。このように力みはどんどんエスカレートしていくのです。

だからこそ、普段から力みを抜いてやるトレーニングを入れていくことが大事です。半分の力で振りきれるためには、最後までいかに力を抜けているかも大事です。トップまでは力が抜けていても、ダウンからいきなり力が入るケースがあります。インパクトを意識するあまり、そこでブレーキがかかっているかもしれません。フィニッシュまで力を抜き続けることがいかに難しいか気づくことでしょう。

坐禅をしていて大事なことは、観察する意識です。ゴルフでも観察していると、いろいろなことに気づき始めます。膝が突っ張る。腕で振っている。頭が動く。ただ、これらをいきなり変えようとしないこと。ただ気づくだけでOKです。最後まで観察し続けるメンタルトレーニングをすることで、必ず力みが抜ける瞬間がやってきます。それがあなたの本当のスイングです。観察することは、実は強く打つよりかなり耐える心を必要とします。この耐える心が、スイングの最後まで力みを抜くにはとても大事です。

このトレーニングを始めると、最初は飛距離が落ちると思います。普通はそこでまた、力を入れて飛ばすことに戻りがちです。しかし、飛距離が落ちた本当の理由は、力が足りないのではなく、タメがないのと芯に当たっていないからです。このトレーニングを続けていると、徐々にクラブがひとりでに走り始め、ヘッドも自然にターンしはじめます。気がつくと、振り抜けているという状態になっていることに気づくことでしょう。そして、振るのが楽になっただけでなく、結果的に飛距離も伸びるようです。

ぜひ、最後まで力を抜ききることに挑戦してみてくださいね。