メンタルトレーニングのコラムを連載中の週刊ゴルフダイジェスト第41号、今週のテーマは「力みが抜ける無重力メソッド」です。

肝心な場面で力んでしまうのは、トッププロから初心者まで共通の悩みです。そして、何とかして力みを抜こうとすると、今度はゆるんでしまう。実は、力みを抜くのは力を抜くのではありません。自然に力が抜ける状態を作れるかが、ポイントになります。

「無重力」という状態がありますが、宇宙飛行士が浮かんでいる姿を見ると、そこには重力がないように見えます。しかし、実は重力はちゃんと存在していて、遠心力と引力などが均等に釣り合っているのです。お互いの力を打ち消し合うことで、重力がゼロになっているのです。

人の体もこの原理と同じです。一つの力だけを使おうとすると、偏るのです。そうではなくて、2つの相反するものを使って、バランスがとれている状態が作れると、自然に力が抜けるのです。真逆を意識することで、あなたのスイングはもっと自然に、そしてどっしりしてきます。

例えば、ゴルフのグリップ。剣道でメンタルトレーニングを指導していると、試合など緊張した場面では、どうしても竹刀を強く握ろうとしてしまうのです。手の力みは、腕、肩に伝わっていきます。力みを取るために大事なことは、竹刀の固さを感じること、握るのではなく竹刀が自分の手を支えてくれているのを感じるのです。そうすると、スッと肩の力が抜けます。ゴルフのグリップでいえば、力を緩めようとすると、必要な力まで抜けて、スイングの軸もブレてしまいます。力を抜くのではなく、グリップが自分の手を支えてくれていることを感じられれば、自然に力みは抜けます。

アドレスでもしっかりと立とうとすると力みが発生します。いらない力が入りすぎると、肝心な時にフラつくのです。足で頑張って踏みしめることの逆とは、地球の存在。地球が支えてくれている感覚を感じながら立ってみてください。しっかりと地面に根が張った感じがしませんか。自分で立つことが半分、地球の支えが半分という感じくらいが、自然に力が抜ける塩梅です。

この無重力を生み出すために、さまざまなメンタルトレーニングを選手と取り組んでいますが、今回はルーティンのメソッドをご紹介します。「真逆ルーティン」と呼んでいますが、まずは打つ前に地球を感じる。そして、ボールを取り出すときの動作もルーティンになります。普段、無意識にボールを強く握っている人が多いのです。それでは、打つ意識の強化になり、力みは抜けません。ボールの重たさ、温度、固さを感じながらボールを優しく持ち、ゆっくりと置いてみてください。そしてクラブを握るときも、グリップの固さやクラブが手を支えてくれることを感じるのです。最初は、なかなか難しいかもしれませんが、まずは一つでも出来ることからはじめて見ましょう。このルーティンをやっているうちに、心が無心になってくると言っていたプロがいました。真逆を意識することで、自然に心の力みがとれてくるのです。体の力みは心の力み。心の力みが抜ければ、体も自然にリラックスしてきます。