トレーニングのコラムを連載中の週刊ゴルフダイジェスト、今週のテーマは「本気のルーティン」です。
皆さんは、ルーティーンで何を意識されていますか?弾道のイメージ、リズム、集中力を高めるなど人によってさまざまだと思います。では、どれくらい本気でルーティーンをされているでしょうか?この質問をすると、本気はあくまでショットであり、ルーティーンは準備という意識で取り組んでいる方が多いようです。
ルーティーンで準備してショットするという流れで、上手くいっている場合はそれでいいと思います。ただ、この流れだと、ショットやパットで力んでしまう、緊張してしまう、素振りとは別のスイングになってしまうという方は、意識を真逆にすることをお勧めします。
ルーティーンが本番、ショットはおまけという考え方です。
いいルーティーンとは、「力みが抜ける」ことと「安心」を作れているかです。集中力が入っていませんが、それでいいのです。まず力みを抜くために、「弱い素振り」をお勧めします。実際のショットの8割の力、人によっては半分の力で素振りをするのです。こんなに力が入っていないと飛ばないのでは、というくらいでいいのです。実はそれくらいで、力みが抜けている状態になります。ルーティンで思いきり振ることで、肩やひざ、背中などに余計な力みが入ってしまい、実際のショットではクラブが走らなくなります。
そして、これまでもお伝えしてきましたが、足の裏で地面を感じる、笑顔で表情を緩める、目をリラックスさせるなども効果的です。不思議なことに、身体の力みが抜けてくると、安心感という副産物がついてきます。安心感は身体のリラックスから生まれるのです。ルーティンで安心感が生まれていれば、実際のショットもほぼ成功します。逆に、安心感が低いほど、プレーの成功率は下がります。
では、実際のショットでは何をすればいいのか。それは、打とうとしないことです。打とうというのは「意識」です。打とうという意識でショットすると、そこには余分な力みが発生します。選手とのメンタルトレーニングでは、打とうとするのではなく、ただ自分の動きを「観察」することに意識を向けることに取り組みます。観察に意識を向けると、打とうという意識は減っていきます。さらに、ショットやパターの最中に自分がどうなっているかを感じられるようになります。緊張すると、トップからの切り返しが早くなる、ダウンで腕の力が入る、などです。
ちなみに、ゾーンに入っている時の状態を「無心」と表現する選手も多いですが、自分が打ってやると意気込んでいる状態は、無心ではありません。スウィングしている自分を客観的に見ているような状態が生まれているときに、ゾーンに入るのです。
ルーティーンで上手く力みが抜けたと思っても、実際にショットやパターしてみると、最初は思い通りにいかないと思いますが、ここで諦めないでください。身体も心も染みついた癖を再現しようとします。だからメンタルトレーニングが必要なのです。観察という意識を持ち続けることで、少しずつ余分な癖が抜けた力みのないスウィングに変わっていきます。