ゴルフや野球がオフになったこの時期は、
受験生のメンタルトレーニングで全国を走り回っています。
来年の受験にむけて、どのようにしたら本番で力を発揮できるか
ということについて、受験生にお伝えしています。
お伝えするポイントは3つ。
「ありのまま」「呼吸を整える」「頑張らない」です。
本番で力を発揮するためのメンタルトレーニングの方法を
アスリートとともに作り上げてきましたが、
持っている力を発揮するという点では、
「ビジネス」や「受験」も同じではないでしょうか。
実は、皆さん頑張り過ぎているのです。
頑張るのは、いいことのように思われることが多いですが、
頑張り過ぎると逆効果になります。
頑張ることを楽しめていればいい状態ですが、
苦しみになっては、力を発揮できません。
頑張り過ぎるというのは、思考が頑張っている状態。
「集中しないと」「もっと早く」「完璧に解こう」
「絶対にミスをしてはいけない」
こうなると、焦りで手に汗をかいたり、
頭が真っ白になったり、思考が先走って
問題が読めなくなったりします。
途中で集中力が切れてしまったり、
ミスしたことを次に引きずったり、
心を立て直せなくなったりしてしまうこともあります。
これは、自律神経でいうと、交感神経が優位な状態。
緊張ばかりが高まってバランスが崩れています。
特に本番、いかに力を抜くかが大切ですが、これが難しい。
リラックスを司る副交感神経の機能を高めるために、
さまざまな呼吸法があります。
受験生には、心臓を意識するコヒーレンス呼吸法をやってもらいます。
呼吸しながら、心臓のあたりを意識してもらうのです。
これだけなのですが、数分やっていると、
半数くらいの受験生が力を抜けるようになってきます。
すると、問題を解くときの集中力や思考力、直感力が向上します。
しかし、半数はまだ力が入った状態のまま。
普段の力みは、すぐには抜けない人も多いのです。
力が抜けない生徒に話をきくと、呼吸法をやっていても、
「ちゃんと呼吸しなければ」「力みを抜かなくては」
「退屈だ」「勉強が気になって仕方がない」といった状態から
抜け出せないのです。
そこで、いろいろ試した結果、一番効果があったのは、
息を吐くこと。
人は頑張ろうとすると、つい息を吸うことばかりに偏るのです。
逆にいえば、吐いていないのです。
息を吐くと、自然に力が抜けていきます。
頑張っている状態は、無意識に上に向かうエネルギーばかりになります。
もっともっとと頑張るほど、自由に呼吸ができない
アップアップの状態になります。
また、息を吐くということを無意識に恐れています。
脱力してしまうと、頑張れないのではないか。
集中力が落ちてしまうのではないか。
ダメな自分が出てしまうのではないか。
だから、無意識に力が入るのです。
これは、ありのままの自分を否定した状態ともいえます。
ありのままの自分というと、性格や考え方を想像しがちですが、
これだけではありません。
人間は、もっとも基本的なありのままの状態でも、
呼吸をしています。
大事なのは、自然な息の流れに乗れるかどうかです。
吐いて吸うという自然な流れは、アップとダウンが
交互にやってくる状態。
緊張と脱力、集中とリラックスのサイクルです。
しかし、緊張した状態を続けていると、息が吐けなくなります。
それでは、頑張っているという自己満足はあるかもしれませんが、
真の集中力は発揮できません。
息を吐いて吸うという流れに乗ることが、
もともと持っている力を発揮するために、とても大事です。
息を吐いて脱力し、底までダウンすると、
次にはアップの山がやってくる。
深い谷が作れるほど、次の山も高くなります。
大きくゆったりとした波です。
しかし、アップばかりになると、谷は浅くなり、山も低くなります。
小さく小刻みな波です。
これは自律神経が乱れて、心も体もいつも緊張した状態です。
いつもどこかに力が入っているので、視野も狭く、
思考も浅く、ちょっとしたことで焦ってしまいます。
深くゆったりとした睡眠はとれません。
不眠症にも見られる特徴です。
最後まで、息を吐くことで、リラックスがおとずれます。
大きくゆったりした波になると、頑張らなくても、
自然に集中した状態になり、それが長く持続します。
受験生達は、自然なダウンとアップの流れを体験すると、
普段、頑張っている感覚とはまったく違うので、驚きます。
「余分な力が抜けると、失敗しても手放せるようになる」と言います。
昔から緊張したときには、深呼吸をしなさいと言われてきましたが、
深呼吸とは、息を吐ききることなのですね。
一度か二度の深呼吸では効果がありません。
何か力が入りすぎた時には、しばらくの間、
最後まで息を吐くことを意識する。
これは、ビジネスでもスポーツでも大切なポイントだと
思っています。
皆さんは、ちゃんと息を吐いていますか?