スポーツ選手のメンタルトレーニングをやっていると、どんなときも冷静にやりたいがどうすればよいかという質問を受けることが多くあります。

感情的になると普段のプレーが出来ないから、出来るだけリラックスして、フラットな気持ちでやろうという気持ちはよく分かります。

「冷静」にという考え方は悪くはないと思いますが、これはやりすぎると、どこかで自分を抑えるということになっていきます。

今、オリンピック出場を目指す陸上選手とのメンタルトレーニングをやっていますが、今のテーマは「全力でプレーするときに、力みをどう抜くか」です。

どうしても、パフォーマンスをマックスにしようとすると、「全力」という気合いが入ります。これによって、身体に余分な力が入ってしまい、動きにキレがなくなってしまうのです。

いかに「全力」という気合いを消せるか。そして、自然に身体が最大限のパフォーマンスを発揮できるか。

先日のセッションでは、上手くいっていないことばかりについて話が出ました。改善点を分析していると、問題点ばかりが気になってきます。

もちろん、成長するためには、事実を分析していくことは大事です。ただ、その事実には「人のエネルギー」も含めて考える必要があるのです。

この話している時のエネルギーが、本来の姿よりも小さく感じたのです。

人の分析は、過大評価と過小評価になりがちです。

この選手の場合は、分析する中で、無意識にエネルギーが小さくなっていました。実際の自分よりも小さなエネルギーでプレーすると、安全に失敗をしないような動きになっていきます。

一方で過大評価は、本来の自分の姿を大きく見せている状態。実際の自分よりも大きなエネルギーでプレーすると、パワーが空回りしてしまいます。

どちらも力は出ません。いかに等身大のエネルギーでできるか。

過大評価も過小評価もどちらも思考です。エネルギーを等身大にするには、思考ではなく、いかに「感じられるか」。

感じるプレーとは、気持ちのプレーとも言えます。

この選手の場合は、陸上で勝つ以外のことに興味がありません。陸上がすべてと思ってやっているのです。このとき、少し目が輝いた気がしました。

でも普段は、気持ちをおさえて、分析しながらやっていたのです。以前、気持ちをのせすぎて上手くいかないことがあったので、極力冷静に、淡々と走るように心がけていたのです。

そこで、もっと気持ちを走りにのせることを提案しました。

この選手の場合は、気持ちをもっと入れることで、自然にエネルギーが外向きにオープンになっていきました。その結果、力むのではなく、自然にパワーがあがっていったのです。

もちろん、気持ちだけでは、どこかで空回りするようになります。

ただ、人のエネルギーというのは常に動いています。そして、過小な状態か過剰な状態ばかりだと偏った小さな波になります。小さな波は小さなエネルギーしか生まれません。

「冷静さ」と「気持ち」の両方を使うことで、エネルギーのスケールは大きくなっていきます。

気持ちをどう使うか。まだまだトライできることはいろいろありそうです。