今回のゴルフダイジェストでは、「心を磨く」ことについて特集されています。ゴルフのプロコーチの方とこの時期だから読んでほしい本について対談させていただいています。
お互いにメンタルトレーニングに取り組んでいますが、ゴルファーはメンタルの重要性について分かっていても、じっくり勉強したり、本を読んでもなかなか実践しない傾向があるという点で一致しました。
スポーツもビジネスも「手っ取り早く結果が出る分かりやすいメソッドが好き」というのが世の中の流れなのだと思います。
すべての学習に共通していますが、手っ取り早い方法を求めるほど、上手くはいきません。
やはり、いかに地道にコツコツと取り組んでいくか。ただ、メンタルの進化は見えにくい。私たちコーチの役割は進む方向性をもっと具体的に明確にする必要があるように思いました。
禅では、「ただ坐りなさい。10年坐れば分かります。」という感じで言われます。禅は「不立文字」と言われるように、すべて体験から会得するというところからスタートしています。今になってみると、まさにこの通りなのですが、初心者には不親切すぎるかなと思います。
坐禅を体験するアスリートやビジネスパーソンが増えています。その時は「心が落ち着いた」と感じても、続けられている人はごく一部です。どの道もそうですが、続けることが一番難しい。特に心を磨くためには、「何が変化しているのか分からない」という時間を通る必要があります。
今、禅を学ばせていただいている藤田一照老師は、坐禅という要素をもっと細かく分解していくためにさまざまなアプローチを模索されています。結果的には、やはり坐ることなのだというところに行き着くのですが、そこに気づくために、武術やヨガ、整体、気功などさまざまな古来からの叡智を研究されています。
勉強会に参加すると、いろいろな本を教科書として使われます。ご自身の著書や仏教書はあまり使いません。仏教以外の分野から坐禅について考えてみると、新たな発見や気づきが生まれるのが面白いです。
今は、なかなか外で思いきり身体を動かせません。こういう時期だからこそ、じっくりと読書を味わってみてはいかがでしょうか。
ちなみに私の方からは、以下の4冊についてご紹介させていただきました。
「禅ゴルフ」(ジョセフ・ペアレント/筑摩書房)
ビジェイ・シンやクリスティー・カーを世界一にした師匠の本。禅をゴルフに活かすための心の持ち方が丁寧に解説されています。「禅パッティング」も実戦的でおすすめ。
「禅マインド ビギナーズ・マインド」(鈴木俊隆/サンガ)
アメリカにおける禅の基礎を作った著者が、わかりやすい表現で「悟り」の世界について語る。スティーブ・ジョブズも愛読した名著。私自身も、この本に出会って禅を学びはじめました。タイトルになっている「初心」という言葉は、今でも座右の銘です。
「マインドフルネスのはじめ方」(ジョン・カバットジン/金剛出版)
マインドフルネスとは今この瞬間に気づく力。欧米のみならず、日本でも医療の現場やビジネスで取り入れる動きが広がっています。瞑想のための音声ガイドもついているので、坐禅はちょっと敷居が高いという方には、こちらが分かりやすくオススメです。
「稽古の思想」(西平直/春秋社)
あなたがゴルフ道を歩みたいなら、先人達の「稽古」という知恵があります。茶道・剣道・芸道など道を究める上での稽古の思想を通じて、「無心」について解説されています。メンタルトレーニングで「無心のスウィング」についてひらめくきっかけになりました。