昨年、アメリカにいったときに、あるトップアマチュアとゴルフをプレーしました。この方は、70歳を超えているのですが、ドライバーは250ヤード以上飛ばすのです。ただ、スウィングは本当にユニークです。そしてショットだけでなく、パッティングもユニーク。見事にヘッドアップしているのです。でもよく見ていると全身を上手く使って打っているのです。

お聞きすると、過去に深刻なイップスを経験されていました。ゴルフをやめようとも思ったそうです。正しいスウィングでないとボールは真っ直ぐいかない。腕や手でしかパッティングできないというのは思い込みです。ただ、この無意識の思い込みがフィーリングを鈍らせていきます。あなたを縛っている「思い込み」を外すことが出来れば、あなたのゴルフに新たな風が吹き込みます。

イップスというのは、ゴルフだけではなくどのスポーツでも起こります。メンタルトレーニングでは、プロアマ問わずイップス改善を依頼されますが、技術だけ身体だけ心だけをバラバラに直しても、なかなか上手くはいきません。

イップスへ向かうスポーツ選手の特徴として、以下のようなキーワードがあります。

・正しく(正しいプレー 正しいスウィング)
・失敗しないように(眉間にシワ)
・同じように(変わってはいけない 不安定になってはいけない)
・昔のように(元のように)
・結果が悪ければすべてクソだ(上手くいかないと投げやり)
・運が悪い(状況を受け入れられない)
・許せない(怒っている)
・こんなプレーも出来ないのは恥だ(これは本来の自分のプレーではない)
・一刻も早く解決しないと(焦りが強く先走る)
・誰にもこの苦しみは分からない(孤独)
・勝つことがすべて(極端に結果にこだわる イチかバチか)

これらのキーワードは、さらに上手くなろうとする選手達に共通する言葉です。長年、ゴルフ以外にも野球やテニス、陸上、剣道などさまざまなスポーツ選手のトレーニングをやってきて真剣に努力する選手ほどイップスになりやすい傾向があると実感しています。

一方で、どんなに努力してもイップスになりにくい選手がいます。あるいは一度イップスを経験し乗り越えた選手達がいます。そうした選手達のキーワードは以下のような感じです。

・仕方ない(しゃーない)
・笑顔で(やっちまったのをネタにして笑う)
・楽しんでいこう(気持ちよくプレーする)
・きょうはこんなプレーだ(日によって調子は変わるので、それに合わせたプレーをしよう)
・新しい発見を探そう(いつも初心で)
・プロセスを大事に(結果ではないその日のテーマを決める)
・昨日よりも今日、今日よりも明日(少しでも成長しよう)
・特別なプレーではなく普通のプレーをしよう
・出来ることに集中する(コントロール出来ないことに目を向けない)
・ひとつひとつ

挙げさせていただいた例は、ほんの一部です。ただ、まったく、プレーへの方向性が違うことはご理解いただけたでしょうか。どんなに練習しても、上手く行かないのは誰しも一緒です。でも、それをどう捉えるかは選手によって大きく異なります。

週刊ゴルフダイジェストに連載中のメンタルトレーニングのコラム「禅の境地へ」第166回のテーマは「動く場所を探す」です。

イップスになってから修正するには多大な労力が必要になります。ぜひイップスにならない方向性のプレーをぜひ研究してみてください。

ちなみにイップスから回復した選手達を見ていると、まったくプレーへの考え方が変わります。「イップスになって自分の未熟さがはじめて分かりました。私はバカなので、イップスになってよかったです。」と笑顔で語っていたのが心に残っています。

また、タイガー・ウッズ選手がインタビューで「若いときの自分にアドバイスするなら、そんなに走るなと言いたい。」と語っていたのが印象的でした。心だけではなく身体への考え方も思い込みになっていることが多いのです。

だから、イップスも一概に悪いものではありません。プレーが一度壊れることで、大きく飛躍できる選手もいるのです。

思い込みをいかに外せるか。

興味のある方はぜひご覧ください。