絶対音感という言葉があります。これは、音の高さや音色を識別する能力のことをいいます。音楽家のような特別の人の能力のように思いがちですが、識別能力の差はあっても音感は誰しもが持っている力なのです。
朝が来ると時計が無くても目覚めたりするのは、人が本来持っている「とき」の感覚ですし、人はこのようにさまざまな能力を本来持っています。
ゴルフでいえば、距離感が非常に大事になりますが、人はもともと空間を測る能力を持っています。これを私は「絶対距離感」と呼んでいます。これは距離を測る力のことです。「ピンまで大体100ヤードだな。だから、これくらいで打てばいいだろう」「5メートルくらいのパットは上りだから、これくらいの強さだろう」という感じです。
特にパッティングではこの距離感が大事になります。しかし、コースによってグリーンの速さが違いますし、上りや下り、フックやスライスなど私たちの感覚を狂わせるさまざまな空間のトリックが仕掛けられています。なので、距離感という本能を磨いておく必要があるのです。というのも、距離感という感覚は、放っておくとズレていくのです。
あるプロゴルファーは、ロングパットの距離感が合わないのが課題でした。試合でもロングパットが寄せきれず3パットをしてしまい、そこから崩れてしまうことがよくありました。
プロアマ問わず、パットの距離感さえ合えばスコアがかなり良くなるのにという悩みを持っているゴルファーは多いと思います。
まず、最初のステップでは自分の絶対距離感がどうなっているのか、知ることから始めましょう。トレーニングでは、20メートルほど離れたカップに向けて、まずは好きに打ってもらいます。その時、打った後カップを見るのではなく、今のパターの感触でどれくらいボールが転がったか答えてもらうのです。
この選手に試してもらったところ、「今はすごくいい感触だったので、カップに寄ったと思います。」と答えました。そして、ボールを見ると手前5メートルほどで止まっていました。もう一度、同じ距離でパットをやってみました。「今度は寄ったと思います」と自信を持って答えました。その結果は3メートルほど手前でした。
こういう時、誰しも落ち込むと思います。ただ何事も、まずは、現実を正確に知ることから始めることが大事です。調子が悪くなると、よくパターを変えるゴルファーがいます。もちろん気分転換にはいいかもしれません。ただパターを変えた時は、少しいい感じになるかもしれませんが、もし絶対距離感が狂っていたとしたら根本的な解決にはなりません。逆に混乱し、もっと悪くなったりします。
まずは、皆さんの距離感がどうなっているか、今回お伝えした内容をもとに計ってみてください。20メートル、15メートル、10メートル、5メートル、これを上りと下りのラインで2球ずつ打ってみてください。パターだけではなく、アイアンでもやってみるといいと思います。アプローチで距離感が合わなかったときには、距離計測機を使って、振り返りをするとすごくいいトレーニングになります。次回からどうすれば絶対距離感を磨けるかについてお伝えしていきます。