ゴルフのプレーをしているときに、右脳と左脳を使い分ける重要性は以前このコラムでお伝えしました。風の計算やコースのマネージメント、あるいはスイングの修正などは左脳の仕事です。ただ分析、修正しながらボールを打とうとするとスイングはぎこちなくなります。これは、左脳でボールを打とうとしているからです。また左脳は過去の失敗や将来の結果への期待などに、心を持っていこうとします。その結果、不安や恐れが襲ってくるのです。これがいわゆるプレッシャーです。

プレッシャーが襲ってくると、体は緊張のために固く動かなくなります。普段のリズムは失われ、打ち急いだり、突っ込んだり、ゆるんだりとさまざまな事象が起こってきます。ボールを打つまでは左脳の仕事、そしてボールを打つのは右脳の仕事なのです。

右脳でボールを打つとは、本能に任せるということです。本能で打つために、ボールの弾道のイメージを描いたり、風の音を聴いたり、深呼吸してリラックスしたりと体が自然に動く状態を作ってあげるのです。

ただ、ショットのときにいきなり、右脳に任せようとしてもなかなかイメージが湧かなかったり、体が動かないケースがあります。これはショットとショットの間に左脳で考え過ぎていることが原因になっています。

移動している時、また待ち時間をどのように過ごすかは非常に大事です。周りの景色に目をむけたり、同伴者やキャディーと他愛もないおしゃべりをしたり、風の音に耳を傾けたり、歩いている地面の感触を感じたり、そういうことに意識を向けるのです。これは間の時間を右脳で過ごすことを意味します。

しかし、「意識を他にむける」ことは想像以上に難しいものです。つい、いろいろ考えてしまうのです。その大半は、今考えなくてもいいこと、考えても仕方がないことでした。人はどうしようもないことを考えるほど、心が苦しくなり、目の前の一打に集中できなくなります。これは誰もが持っている心の癖といえますが、癖は変えられます。全部、心に浮かぶまま考えるのではなくて、意識してやめるという決断が人間には出来ます。ただ、すぐにできるようにはなりません。だからメンタルトレーニングが必要なのです。

アニカ・ソレンスタム選手はショットやパットについて考えるのは、打つ前の30秒間だけだったそうです。それ以外は、ゴルフのことではなく別のことに意識を向けているのです。30秒だけに絞ることで集中力や直感力が発揮できるのです。

プレーを複雑にするのも、シンプルにするのも「間」の時間次第。ぜひ「間」をうまく過ごしてみてくださいね。