平昌オリンピックも終わりましたね。日本は過去最高のメダル数を獲得しましたが、皆さんはどの競技を見ましたか?

私が一番、心に残ったのは、スケートの小平奈緒選手です。30代にして初めての金メダル。また、競技の後、銀メダルに終わった韓国人選手と肩を組んで、お互いの健闘をたたえ合う姿は素晴らしかったですよね。

試合後のインタビューで、「自分は求道者。金メダルが究極の滑りではない。さらに世界最高のタイムを目指して頑張りたい。」と淡々と話していました。

これは、オリンピックに臨むにあたって、金メダルを突き抜けたその先にある、自分自身のゴールを持っていたということです。

おごらず謙虚であり、かつ内側から静かな闘志が溢れる姿は、相手に勝つか負けるかという次元を超えていました。誰も到達していない世界にむけて挑む自分自身を、求道者と表現されたのでしょう。

ソチ、平昌と2大会連続で金メダルを獲得したフィギュアスケートの羽生結弦選手も、「結果よりも内容に満足している。自分の今持っている力をすべて出し尽くせたことに、はじめて満足している。」と話していました。ということは、ソチ五輪で金メダルと取ったときも、世界最高得点を出したときも、自分の演技には満足していなかったということです。

そして、今回直前のけがを乗り越えて勝利を掴んだことについて、「弱い自分がいるということは、これから強くなる余地がある」とコメントしていました。今回は弱さも含めて、自分のすべてを演技に出しきれたということではないでしょうか。

小平選手も羽生選手はもちろん、4年に一度のオリンピックでの金メダルを目指して、頑張ってきたのだと思います。しかし、オリンピックではみんな金メダルを目指して戦っています。その世界最強の強豪たちとの戦いでは、金メダルを目指すことが、逆に自分が力を出し尽くすことを妨げる。そのことを知っているのだと思います。

オリンピックに出場できること自体が、選ばれたものの世界です。しかしだからこそ、自分の持っている力を出し尽くすことが難しい。

そして、銀メダルがとれても自分の演技に納得できず悔し涙を流す選手もいれば、今回4位と惜しくもメダルを逃したフィギアスケートの宮原知子選手のように「持てるものを振り絞って」自己ベスト記録を更新し、笑顔で五輪を終えることができた選手もいます。

自分の持っている力を出し尽くせれば、どんな結果に終わっても悔いは残りません。ただ、プレッシャーにのまれて、自分の持っている力を出せなければ、悔いが残ります。

もちろん金メダルは世界最高の勝利だと思いますが、これも一つの結果なのです。確かに金メダルを目指すことでモチベーションがあがる選手もいますが、やはり結果は相手あってのもの。相手次第で自分の心は揺れてしまいます。相手に囚われているうちは、突き抜けた力を出すことは難しいのです。お2人を拝見していると、金メダルへの挑戦を見事に自分への挑戦にできたことが勝利の鍵になったように思います。

順位よりも、自分の限界に挑む。人との勝負ではなく、自分との戦いに勝つ。これは、日本人にあった、もっとも力を発揮するメンタルの持ち方といえます。

やはり、金メダルを獲得する選手には考え抜かれた哲学がある。彼らの生き様は、私たちに勇気を与えてくれますし、長く記憶に残ることでしょう。