ショットの際、重要なことは緊張をほぐすことです。過度の緊張はスムースにスイングすることを妨げます。スイング中に正しい姿勢を保ち、クラブを握るためにはある程度の緊張は必要ですが、必要以上に筋肉が緊張すると滑らかなスイングができなくなります。

過度な緊張をほぐすためには、まずは体のどの部分にどれくらいの緊張が生じているかを認識することです。そのために、禅ゴルフの著者であり、私の師匠であるアメリカのメンタルトレーナー、ジョセフ・ペアレント博士は、著書の中で「ボディスキャン」という手法を紹介しています。

私もメンタルトレーニングで活用しているのですが、大変効果があります。ボディスキャンとは、まずは体の細部に注意を払い、それぞれの部位が感じている緊張の度合いを測定します。ゴルフにおいては、練習場でクラブを構えた時に測定してみるといいでしょう。

頭のてっぺんからはじめ、顔面、あご、首、そして胴体に注意をむけて、肩、胸、腹、背中、腰など体の各部の緊張度をチェックします。そして腕はひじ、手のひら、指。また脚では太もも、ひざ、ふくらはぎ、足、指などを点検します。

トレーニングでプロにボディスキャンをやってもらうと、緊張している部位を確認するだけで余分な緊張をある程度解消することができることに驚きます。一番良くないのは、緊張していることを責めることです。責めることで、さらに緊張は強くなり、緊張が自分の心や体を支配してしまいます。

実は緊張は、過去の蓄積でもあるのです。過去のさまざまな経験が身体にテンションとして、しこりのように溜まっているのです。なので、少しずつこのテンションというしこりをリリースしてやる必要があるのです。

また緊張とは、期待の裏返しです。いいスコアをだしたい、ピンに寄せたい、絶対に入れたい。期待と緊張はコインの表と裏のようなものであり、切り離すことはできません。期待が高いほど、緊張度は高くなります。緊張を感じたら、責めるのではなく、観察することです。まずどのような場面や状況で緊張が起こるのか、そしてどのような部位にそれが現れるのか、練習やラウンドをしながらチェックしていくのです。

ゴルフでは一般的に、あご、肩、腕、手、背中、ひざ、手首、足首、指などが、緊張するという状態が起きやすいです。緊張は人によって起こる状況も体の状態も違うので、まずは自分の心と体の癖を知ることがとても大切になります。そして、緊張している箇所に気づいたら、焦って排除しようとするのはなく、優しく注意を向けましょう。どんな感じかなと体に問いかけてみるのもいいですね。

本番だけでなく練習場でもボディスキャンを行ってみてください。緊張から逃げていると、緊張は大きくなっていきます。まずは、ただ認識することから始めましょう。実は緊張は大きなものではありません。自分の意識が緊張を大きくしているだけで、実はもっと小さく繊細なものです。細かく見ていくことが、緊張と上手に付き合う第一歩になります。