皆さんは、行き詰まったときにどうしていますか?答えがでるまでとことん考える。考えても仕方がないので寝る。人に話す。いろいろな方法で対処されていることと思います。
ただ、人には苦手なテーマが必ずあります。人間関係、お金、時間の使い方。ゴルフでいえば、コースのマネージメント、パターの距離感、バンカーショットなどでしょう。苦手なことで行き詰まると、不安や焦りで目の前のことに集中できなくなったり、行動をついつい先延ばしにしてしまったりします。
心がざわつく、やる気が出ない、行動に躊躇がある、先延ばししたい…こういうときが誰しも必ずあります。そんな時は、まず整理、整頓するように指導しています。選手からは、これがメンタルトレーニングですかと不服そうに言われることもあります。ただ多くの場合、行き詰まったときには、周りが乱雑になっていることが多いのです。それを何気なく整理し始める。あるいは、一週間の予定を整理してみる、パソコンのトップ画面のアイコンを整理してみる、メールフォルダを整理してみる。整理するのは何でもいいのです。
そして、不思議なことに、ただ整理しているだけで心が落ち着いてきます。いつしか時間を忘れて、無心でやっていることに気づくと思います。これは、庭に生えた雑草をひたすら抜いているような感じともいえます。減らしたり、整えることで、心は自然にシンプルになっていくのです。これは心を覆っていたさまざまなエゴや思考が取れてきた状態。シンプルになると、私たちの内にある魂の声が聞こえてきます。
ある若手の女子プロゴルファーは、ピンチになったときに、立て直すことが苦手でした。練習ラウンドでたてたせっかくの戦略も、ミスが続くと、混乱してきて、冷静な判断が出来なくなるのです。本人曰く、考えれば考えるほど頭が真っ白になるそうです。こういう場合、何か知識やスキルを足しても意味がないケースが多いです。それよりも、いかにシンプルにしていくかがメンタルトレーニングでは重要です。
キャディーバックを見せてもらったところ、中はグチャグチャでした。使っていないボールや手袋なども入っているし、以前試合中に食べたバナナの真っ黒な皮が出てくる始末。そこで、毎日整理する時間を3分作ってもらいました。しかし、これが難しいのです。朝、宿題を忘れていたのに気づいて、慌てて整理している姿を何度も見ました。時には、「こんなことをして何の意味があるのか」と逆ギレもされました。しかし、1ヶ月ほど続けているうちに、整理した状態が気持ちよくなってきました。身の回りが乱れていたり、汚れているとき、心がざわついていることに気づいたのです。整理することが習慣になることで、プレーにも安定感が出てきました。特にピンチの際に、ミスの連鎖を最小限にできるようになりました。
心が混乱しやすい人は、同時に多くのことを抱え過ぎているのです。それを頭でどうにか対処しようとしても限界があります。ビジネスでも多くの企業が「3S活動」に取り組んでいます。皆さんご存じだと思いますが、3Sとは「整理・整頓・清掃」です。いい仕事をしようと思えば、まず身の回りを整えること。これはゴルフでもとても有効です。行き詰まった時こそチャンス。まずは整理からはじめてみてください。