メンタルトレーニングのコラムを連載中の週刊ゴルフダイジェスト、今回のテーマは「決めきる力」です。
ゴルフのショットやパットの前にしっかり「決めきる」大切さについては、これまでも何度かお伝えしています。ただ、それでもなかなか決めきるのは難しい。ちなみに決めきれないとどうなるのか。「打たされる」という状態になります。
例えば、5メートルほどのパットを大きくオーバーする場合があります。これは、バーディパットで何としても入れたいという気持ちが強いときに起きやすい現象です。バーディという魔力に打たされるのです。
また、同じく5メートルほどのパットを大きくショートする場合があります。これは下りだから速い、オーバーして3パットしたくないという気持ちの時に起きやすい現象です。下りという魔力に打たされるのです。
打たされたパットを観察していると、素振りは一応やっていますが、実際のストロークはバックスイングが大きくなっていたり、リズムが速くなっていたり、頭がカップの方向に動いたり、パンチが入っていたりします。
形だけでのルーティーンや素振りでは意味がありません。まずは具体的なイメージを作ることが大事です。球の速さ、ライン、そして距離のイメージ。素振りをしながらイメージを決めて、あとはその通りパットできるかどうかがメンタルの鍵になります。
打たされている状態では、結果を考えながら何となく打っているので、どんなストロークをしていたかを覚えていません。あるいは、テークバックまでは覚えていても、インパクト以降が消えているというケースもあります。
またいったん決めたとしても、途中で自信がなくなったり、気持ちが揺れて、最初に決めたストロークを信じられなくなることもあります。これだと、どうしていいのか体は混乱します。その結果、パンチが入ったりして予想もしていなかった距離を打ってしまうのです。
大事なことは、結果ではありません。あくまでプロセスです。メンタルトレーニングのレッスンでは、ストロークの最後までプロセスに意識を向け続けることで、打たされることは減っていきます。パターのヘッドが止まるまで意識することを習慣にしていきましょう。
また、アドレスをしてから打つまでに時間がかかっているケースがあります。これは百害あって一利なし。頭は思考でいっぱいになってしまいますし、身体が硬くなった状態で打つ癖がついてしまうと、そのリズムが定着してしまいます。イメージは素振りできっちり決めきって、アドレスしたらそのままの流れで打ちましょう。思考が減って、身体が柔らかくなるほど、必ず直感力は増してきます。決めてそのまま打つ、というリズムに慣れていきましょう。
結果だけを考えていると、間違いなく「欲」や「怖さ」に打たされてしまいます。そうではなく、具体的なイメージを作り、信じぬいてパットできるかどうか。決めきるとは「最初だけ」ではなく、「最後まで」が大事になります。結果や欲に打たされるパターから、プロセスを大事にするパターにメンタルの意識を変えていきましょう。