メンタルトレーニングのコラムを連載中の週刊ゴルフダイジェスト、これまで2回にわたって「3S」のメンタルトレーニングをお伝えしていますが、今回は3つ目のS,「しぶとい心」です。
最終回は「しぶとさ」。悪い流れのときにいかに粘るか。しぶとさの大切さは分かっても、実践するのはなかなか難しいものです。
毎年この時期に、医学部を目指す受験生向けにメンタルトレーニングをしています。医学部は偏差値が高いだけでなく、多くの大学で10倍を超える狭き門になっています。受験とゴルフは一見関係がないように思いますが、実はメンタルという側面では共通点が多いのです。
医学部を目指す受験生は、高い倍率ゆえに完璧にやらなくてはならないと思って試験に臨みます。ケアレスミスはダメ。早く解かないと間に合わない。しかし完璧を求めると、失敗が許せなくなり、自分を否定し傷つけるのです。その結果、過度な緊張状態に陥り、普段解けている問題が解けなくなったり、ちょっとした失敗で大きく動揺するのです。
私が受験生にお伝えするのは「10%の粘り」です。完璧でなくていい、苦しい時に10%耐えることをお伝えすると、ほとんどの受験生から10%では受からないと否定されます。しかし、10%でいいのです。
なぜなら、受験する段階である程度の偏差値までは到達しています。戦いはその偏差値周辺にいる受験生の間で行われます。だから合格するためには普段通りの実力が出せるかどうかが鍵なのです。
その上で、失敗したとき、分からないとき、心が折れそうになったときに、10%粘れるか。ほとんどの受験生が問題を解けないときや思い出せないときに、自分だけが失敗したと思いがちです。そうではないのです。ほんの一部の天才を除けば、99%の受験生が同じ失敗を同じ回数しているのです。
必ず分からない問題は出てきます。その時に自分だけがミスしたと思ってしまうと、リカバリーは難しい。1回こけて1回立て直すことは誰でも出来ます。でも5回こけて5回立て直すには、完璧を求める心では出来ません。ここで10%の粘りが生きてきます。何回立て直せたかで勝利がやってくるのです。
プロ野球選手でも同じことがいえます。完璧に打とうとする選手ほど、諦めが早い。10%粘れる選手は、アップダウンがあっても、シーズンが終わってみれば、平均的にいい数字をあげています。本来3割打てる力があったとすれば、10%力を出せなければ、2割7分。結果的にこれくらい大きな差がつくのです。
しかし、10%粘るのは簡単ではありません。完璧を求めても粘りは出ません。むしろ完璧を求めると、100か0になります。これはパッティングでは、入るか入らないかというデジタルな判定です。10%粘るプレーとは、結果に焦点を当てないこと。10%手が動いたか、10%気持ちよく振れたか、プロセスの質を上げることに全力を注ぐのです。プロセスの質を上げるには、いろいろアナログ的な工夫が必要になります。
ぜひ、10%粘る工夫にトライしてみてくださいね。