メンタルトレーニングのコラムを連載中の週刊ゴルフダイジェスト、今週のテーマは「ルーティンを止めてみよう」です。
このコラムではこれまでルーティンの大切さを伝えてきましたが、今回は逆のことをお伝えします。「えっ、真逆??」と思った皆さんもいるかもしれませんね。メンタルトレーニングでは、真逆のことが実は真実なのです。
思考がプレーを邪魔しているケースでは、ルーティンを止めましょう。ターゲットを見て、構えて、さっと打つのです。
人は本来シンプルなものを、複雑に考えるように出来ています。しかし、「直感(フィーリング)→思考→ショット」という流れでは、スムースなショットは難しい。直感から生まれる身体のフィーリングが思考というフィルターを通ってしまうと、死んでしまうのです。
大事なことは、「直感→ショット→思考」という流れに出来るか。まずはやってみる。体験した後に思考で振り返るという流れが自然な成長を生み出します。子供の時を思い出してみて下さい。好奇心の赴くまま何でもやってみたと思います。上手くいけば素直に嬉しいし、痛い目を見る中で、次はこうしようという学びや気づきが自然に生まれるのです。
しかし、大人になる中で、予測するという思考が育ってきます。失敗して痛い目を見たくないので、あらかじめリスクを考えるのです。この予測は社会生活においては必要な能力です。現代社会では、よく考えてから行動することがよいこととされています。しかし、実は間違っている場合もあります。人間関係でもそうですが、傷つくことを恐れる思考は、固定概念という枠を作りだすからです。いかに固定概念の枠を打ち破るかは、メンタルトレーニングの重要なテーマです。
人がスポーツで身体を動かすことに心惹かれる理由には、体験することの気持ちよさ、そして未知のものに挑むということへの好奇心があります。
プレー中に思考が増えている方は、ルーティーンをやめて、まず打ってみるという原点に戻りましょう。また、成功かミスかでプレーを考えていると、どんどん頭でっかちになっていきます。フェアウェイ、グリーン、カップが小さく見えるときは多くの場合、フィーリングが消えて頭でっかちのプレーになっているときです。試しにとりあえず打ってみるくらいの感覚が、身体にとっては一番表現しやすいのです。
ゴルフの練習場では、「とりあえず打ってみる」という感覚で打っていると思います。だから、身体も硬くならないので、いい球が生まれるのです。本番でもそこのメンタルは変えずに、常に実験精神で臨めばよいのです。
ゴルフショップで試し打ちしたり、新しいクラブに換えたときに気持ちよく打てたという経験は誰もが持っていると思います。これは、新しいクラブを持ったときはよく分からないので「とりあえず打ってみよう」という状態になるからです。しかし、しばらくするとまたいつもの調子に戻っていませんか。ゴルファーの多くが「クラブが合わなかった」と思いがちですが、そうではないのです。しばらく打っている間に、とりあえず打ってみよう精神が消えて、「いい結果を出すためにきちんと打とう」といういつもの思考に戻っているのです。ぜひ、毎回新しいクラブを持ったつもりで、実験的な気持ちで打ってみてください。