メンタルトレーニングのコラムを連載中の週刊ゴルフダイジェスト、今週のテーマは「タメを作るシンコペーション」です。
タメが上手く作れないという悩みを聞きます。プロでも調子が悪くなってくるとタメがなくなり、飛距離が落ちたり、左右に曲がるようになります。逆にいえば、いいタメが生まれているときは、少々スウィングがずれても、まっすぐ飛んでいきます。タメはスウィングの問題と考えがちですが、実はメンタルトレーニングの重要なテーマでもあります。
スウィングのレッスン書を読むと、タメは上半身と下半身のズレから生まれる。また、トップにクラブが上がりきる前から、ダウンに入ることが大事。そのために、下半身から始動すると書かれています。すべて正しいですが、分かっていてもなかなか体が動かないという方のために、今回はメンタル面から「タメ」について考えます。
まずタメとは、トップからダウンに切り返す際に生まれると考えがちですが、実はクラブが始動する時点でいいタメが生まれるかどうかが決まります。
みなさんの中には、緊張した時に始動の動きがぎこちなくなった経験はないでしょうか。さあ打つぞと脳が命令し、体を同時に動かすと大抵の場合、いいタイミングにはなりません。池などを前にして、嫌な感じがするときは、心と体の始動のタイミングが同じになっています。嫌な場面で「えいっ」と打つとダフったり、引っかけたりする。人は力んだり緊張すると、リズムが単調になるのです。
一斉に「せいのっ」という感じで始動すると、間がなくなるのです。恐らく、緊張せず、いいリズムで打てているときは、いい感じで腰や肩、道具の動きにズレ、つまり間があるはずです。また、タメは体のズレから生み出すと考えがちですが、実は心と身体のズレでもあります。身体と心が上手くズレルとタメが生まれるのです。
「緊張するとプレーが単調になる」というのは、緊張すると表の拍だけになり、裏の拍がなくなってしまうのです。だからこそ、あえてここ一番には、シンコペーションのリズムを心の中で意識することです。シンコペーションとは、音楽と強拍と弱拍の位置を本来の場所からずらし、リズムに変化を与えることです。最新の脳科学の研究でもシンコペーションのリズムに乗って体を動かすと、運動能力が高まることが分かっています。
そのために、心を先に走らせるのです。まずはアドレスして、意識だけをテークバックの方向に動かしてみてください。身体は動かさず、意識だけを先に動かすのです。この練習をやっていると、だんだん身体が自然についていくようになります。大事なことは身体をリラックスさせること。そして、構えていろいろ考えてから始動するといつもの表の拍になってしまいます。構えたら、考えはじめるまえに、心を走らせるということを心がけましょう。心始動でいいタメを作る。
なかなか体の力みが抜けないという方は、意識を始動する前に、クラブをトンと地面に置くというステップを入れるのもお勧めです。トンとクラブを地面に置くことで、そのとき肩や腕の力が抜けます。その瞬間に心を始動させるのです。トン、スーというリズムです。
メンタルトレーニングでいいタメを作っていきましょう。