プロのメンタルコーチとは?

今、私が聞かれれば、「分からないこと」と答えます。

昔は、選手のことを分かったつもりになっていました。
そして、選手を指導していました。

選手を分析して、必要なメソッドを伝える。

これが悪いわけではありません。
しかし、これでは選手の答えをコーチが決めてしまうことになります。
これは「有限の指導」

私は、選手とともに「無限の可能性」を探求したい。

そのためには、常に「分からない」状態でいること。
常に「初心」でいることとも言えます。

コーチが「解」をもっているのではない。
選手が「解」を持っているのでもない。

選手とコーチが力を掛け合ったときに、必要な「解」が生まれるのです。
これは「智慧」といってもいいと思います。

あらかじめ用意した解ではなく、新たに生まれる解。

思いもよらないとき、思いもよらない形で、その智慧は顕れる。

だから、メンタルコーチとしての私の仕事は「分からない」でいることなのです。

しかし、メンタルトレーニングをしていて、答えを持たず、選手の前にいることは怖いです。

だって、選手は手っ取り早い答えを求めて待っています。

その期待に応えないのは、かなりの勇気が必要です。

無能と思われるのではないか。

役立たずと思われるのではないか。

首を切られるのではないか。

でも、分からないままいる。

そして選手と初心で対話する。

解が顕れるときもあるし、残念ながら、顕れないときもある。

私にとっては、答えを天に委ねる感じです。

信じていれば、必ず必要なときに、必要な智慧がやってくる。

分からないまま待てるか。

私にとって選手とのセッションは、禅の実践でもあり、アートでもあります。

メンタルトレーニングのコラムを連載中の週刊ゴルフダイジェスト第29号、今週のテーマは「解は無限」です。