身体と心が調和したときに、最高のパフォーマンスが生まれます。スポーツは身体のアートといえます。
ゴルフではそこにクラブ、野球ではバット、テニスではラケットが加わり、身体と心と道具の総和が「リズム」となっていきます。
選手たちとのメンタルトレーニングでは、音楽の「グルーヴ」を喩えによく使います。
グルーヴとは、音楽のテンポやアクセント、リズムの感覚全体を指します。ある音楽の指導者によると、「演奏家同士がお互いに感じあいながらアンサンブルすることで、絶妙なグルーヴが生まれる」そうです。
ノってるねという感覚でしょうか。
ただ、音楽でもいいグルーヴを生み出すのはなかなか難しい。プロの演奏家でも、上手く演奏しなくてはというプレッシャーが生まれると、お互いを感じ合うという絶妙なバランスが崩れます。頭で考えはじめた瞬間にグルーヴは消えてしまいます。
これは、ゴルフをはじめ、どんなスポーツにも言えます。練習ではスウィングの修正を考えながら打ったとしても、上手くいきます。それは何度も打てるから。
試合のように一度しかないプレーにおいて何かを直そうという思考は、スウィングのグルーヴを奪ってしまいます。
どんなに綺麗なスウィングをしても、グルーヴが消えていれば、ボールは思うように飛んではくれません。飛距離が落ちたり、左右に曲がるようになります。
それは、多くの場合スウィングの動きが間違っているのではないのです。動きを直そうとする思考が、グルーヴを消しているのです。
グルーヴが消えると、音楽でいう「ノリ」、ゴルフでいう「タメ」がなくなっていきます。
坐禅で一番難しいのは、頭で考えて正しい坐禅をしようとしないことです。いかに身体に委ねて、呼吸の働きに任せられるか。
では何をするのか?
それは「ただ観察すること」です。
自分がスウィングするのではなく、スウィングを観察するというあり方でスウィングを見守るのです。
練習場でも、スウィングを直そうとしながら打つのをやめましょう。そして、身体の中で起こっている「静」と「動」を観察するのです。
「静」とは、足の裏がしっかりと地面についている感覚、また下半身がしっかりと動かず止まっている感覚かもしれません。
そして、「静」を観察していると、「動」が自然に分かってきます。「動」とは上半身が動いている感覚、クラブが動いている感覚かもしれません。
悩んだときには、直すのではなく、静と動の観察に戻りましょう。
週刊ゴルフダイジェスト第49号、メンタルトレーニングのコラム「禅の境地へ」第142回のテーマは「クラブの動きを直そうとすると、スウィングのグルーヴがなくなる」です。
ご興味のある方は、ぜひ読んで見てくださいね。