緊張した場面でスポーツ選手を観察していると、ゴルファーだけではなく、どのアスリートにも共通して言えることがあります。

それは、表面でプレーしようとしているのです。表面とは、肌が力んでいる感じと言えるかもしれません。

人は力んだ時に、外側の筋肉に力が入るように出来ています。早く走ろうとしたり、バットを思い切り振ろうとしたり、高く飛ぼうとすると、外側の筋肉が力んできます。外側の筋肉が力んでいる状態では、インナーマッスルが上手く働きません。力は入れているのに、ヘッドスピードが上がらないというゴルファーは、外側の筋肉とインナーマッスルのバランスが崩れているのです。

また初対面の人に会ったり、重要なプレゼンで顔の表情がこわばったり、震えたりすることがあります。あれは、表情筋と呼ばれる筋肉が固くなっている状態です。特に顔には神経が張り巡らさせれているので、心の状態が出やすいのです。そして顔が固くなっていると、他の部分の動きにも影響します。いかに自然な表情でいられるか。

この答えは一つではありません。メンタル面からのアプローチもありますし、ヨガなど身体面からのアプローチもあります。要はいかにリラックスした状態を自分の中で作れるか。

皆さんはプレーをするとき、歯を食いしばっていませんか。

一昔前は「歯を食いしばれ」と指導されていた時代もありましたが、まさにあれを実際にやっている選手が多いのです。要は、必要以上に頑張ろうとしすぎているのです。あるいは、心を追い込みすぎているのです。それが歯に出るのです。

力んでくると、歯を食いしばって、口の中のスペースもありません。この状態だと眉間にしわがよっていたり、ほっぺたがプルプルと震えていたり、顎がこわばっていたり、顔の筋肉にも力が入っています。

歯を食いしばる必要があるのは、重量挙げなどよほど力を入れないといけないときです。ゴルフでショットやパッティングをするときには、歯を食いしばるほど力を入れる必要はありません。

口を閉じているときに歯と歯の間に紙を一枚いれたくらいわずかに隙間あるか。また、口の中にスペースを感じられているでしょうか。

ただ、どのスポーツでも頑張ろうとすると、無意識に歯を食いしばろうとするのです。あるプロゴルファーは、眠っているときの歯ぎしりが激しく、眠りが浅いのが悩みでした。この選手の場合、常に緊張した状態で、オンとオフがないのです。

こうした場合、身体が力んでいるのが普通になっているので、自分が緊張していることに気づけません。

普段から歯と歯の間の隙間と口の中のスペースについて、意識してもらいました。気がつくと、テレビを見ている時間にも気がつくと歯を噛みしめていました。そのことに気づき、ふっと歯の力を抜くことで、お尻に入ったいた力がスッと抜けました。このときはじめて、オフの状態を感じられたそうです。

つい無意識に力んでしまうというゴルファーの皆さんは、ラウンド中に、ぜひ歯を感じてみてください。緊張する場面や力んだ場面では、どうなっているでしょうか。そして、歯の力みを抜いてみましょう。

なかなか難しいという方は、下顎が上顎にぶら下がっている感じをイメージしてみましょう。人は緊張すると、下顎が上に上がります。下顎が緩んでくると、自然に表情も緩んできます。唾液が出てきているのがリラックスのサインです。

週刊ゴルフダイジェストに連載中のメンタルトレーニングのコラム「禅の境地へ」第162回のテーマは「無駄な力みを取り除くには、スケルトン(骨格)のイメージで振る」です。

今回のコラムの紹介の文章を書きながら、歯は骨ではないので少し話がズレていることに気づきました。

申し上げたいことは、無意識に入った筋肉の力みは筋肉の力を抜こうとしてもなかなか上手くいかないということです。自然に抜けていく状態になっていくために、いかに身体の使い方や心の持ち方を工夫していくか。

ご興味のある方はぜひご覧ください。