赤野コーチがメンタルトレーニングのコラム「禅の境地へ 滴り積もりて」を連載中の週刊ゴルフダイジェストが発売されました。

人には考える脳と感じる心の2つの働きがあります。

私たちは普通にしていると、スイングの途中で考える脳が動き始めます。例えば、強く打とう、飛ばしたい、クラブをあげる場所が違う、スイングが速い、肩が開いた、下半身を動かさない、ボールの行方、バンカーに入れたくない、このホールはパーで上がりたい。

これらはすべて考える脳が発動した状態です。考える脳が動くと、感じることはできません。

素振りと本番のスイングが違うという悩みを持っている人がいます。素振りでは、恐らくスイングを感じながら振っているのですが、ボールを置いていざ本番になった瞬間、考える脳が動き始めるのです。

では、感じる心とはどんな状態なのでしょうか。

感じる心には、美味しい不味い、良い悪い、正しい間違い、失敗や成功、結果に対してのこだわりはありません。これらは、すべて考える脳の働きです。人間は思考によって意味づけする生き物なのですが、実は、意味づけする前に名無しの状態があるのです。これが感じる心とも言えます。物事→思考(ジャッジ)とすぐに反応する前に、ただ感じるというスペースを入れられるか。

選手たちとは、この感じるというスペースを作る訓練を日常生活からやっていきます。例えば、ご飯を食べる時も、好き嫌いや美味しい不味いということをすぐに考えますが、そうではなく、まず口に入れて、食感を舌で確かめたり、ゆっくり噛んで味わうという感じる時間を持ってもらいます。

そしてスイングにおける感じる心とは、スイングや体の状態を受け取る感覚です。スイングしている後から0.5秒ほど遅れながら感覚がついていく感じともいえます。動いている体やクラブを感じながら心が後からついていっているので、動きを邪魔することはありません。

そして、クラブを始動する時からフィニッシュまで最後までいかに感じきるか。感じている流れを考える脳によって途中で止めないこと。まずは、感じ切れているか、途中で途切れているか検証して見てください。プロによると、クラブによって違うそうです。得意なクラブは比較的最初から最後まで感じられているそうですが、苦手なクラブ、ある選手はパターについては、まったく感じられていなかったそうです。

ただ、感じているだけでいいのです。スイングをコントロールしようとしたり、途中で変えようとしないこと。スイングの修正はまた別の練習なのです。感じる練習をやっていると、体とクラブ、心の動きが一体になっていきます。このコンビネーションがいいリズムになり、結果として自分らしいスイングに体が目覚めることになるのです。これがいわゆる「感性」です。

選手たちに、感じるだけでいいと伝えると、最初は疑心暗鬼になるようです。それは当然の疑問だと思います。しかし長いスランプに陥る選手に共通しているのは、感性がなくなってしまったという声です。感じる心とは、スイングの感性を高めること。感性がなければ、どんなに練習しても、状態は悪くなっていきます。

アマチュアの中にも、感じることが自然にできている人も多くいます。感性という感覚がよく分からないという方はぜひ、感じる心を練習に取り入れてみてくださいね。