世俗の中で、いかにこの瞬間を豊かに生きるかが、
私のライフワークです。
そのためには、坐禅、禅の考え方というものがとても役に立ちます。

私が禅とはじめて出会ったのは20年前。
仕事で忙しく中断した期間もありますが、なんとか今日まで
禅との関わりを続けてこられました。

様々なご縁をいただく中で、禅リーダーシップ講座を
先日スタートしました。

対象は、禅に興味がある人。
仕事や人生に禅を活かしたい人です。

どんな内容にするのか悩みましたが、
講座は2部構成にしました。

第1部は、禅についての本を読みながら、
お互いに禅への理解を深めていく時間です。

第1部で頭を使った後は、体を使う時間です。
今回は、初歩的な坐禅の組み方を体験していただきました。

足の組み方、正しい姿勢、五感で感じることなど、
これまで実践してきた中で学んだことを
私なりにお伝えさせていただきました。

まずは「上手に坐る」ことよりも、
「とにかく坐ってみる体験」を重視しました。

坐禅の後に感想を聴いたところ、足が痛かった人、
眠くなった人、頭の中にずっと音楽が流れていた人、
映像が浮かび続けていた人、なんでこんなことしないと
いけないのかと思った人、様々な方がいました。

私は、世俗の禅では、思いを聴き合うのがとても大事だと
考えています。

お互いに、率直な思いを伝え合うことで、理解が深まりますし、
自分だけが出来ないのではなくて、他の人も同じような道を
通っているのだと分かることで、勇気が湧いてくるのです。

僧侶も1人ではなく、サンガという修行者のグループで
仲間と一緒に修行を極めていくように、
世俗の禅でも、お互いに助け合って進んでいくことが必要です。

弱音を吐いていいのです。
出来ないことを出来ないと言えることが次へのステップに
なりますし、そうしたどんな本音でも言える、
安心できる場を作ることが、私の役割かなと思っています。

私自身も禅の修行に参加したとき、さっぱり上手く
出来ませんでした。

まず痛い。とにかく痛い。上手く座れない。
上手く呼吸に集中できない。
意識がすぐにどこかにいってしまう。
眠くなる。周りの人がすごいように見える。

そんな出来ない自分が嫌でした。
なぜなら、少なくとも仕事や人生では、頑張って出来るように
なっていたし、評価もしていただき、成長しているように
思っていました。

やっとここまで来たのに、こんなに出来ない自分がいることに
がっくり失望したんです。

坐禅は難しい。でも難しいからこそ、普段気づいていない
様々なエゴに気づけます。

そして、出来ない自分を受け入れることが出来たとき、
私なんか大したことないことに気づけました。

痛さですぐに心が折れるし、眠気に負ける。
それが私なのに、何かすごい人になれたような気になる。
上手くなったような気になる。人に勝ったような気になる。

坐禅では、毎回気づかせてくれるのです。
私なんか大したことないというのは、自分への全否定です。

しかし、それが究極の全肯定なんです。

なぜなら、この全否定がうぬぼれた自分を、
エゴでまみれた心を原点に返させてくれて、
ありのままの自分を受け入れたところから
またスタートできるからです。

講座の最後に参加者からは、「地味だった」、「一生かかる」、
「嫌だった。嬉しくはなかった。」という感想が出ていました。
いわゆる自己啓発のセミナーでは、もっともダメな感想です。

「すごく楽しかった」「大切なことに気づいた」「すぐ出来そう!!」
「すごくためになった」
一般的には、これらの感想が出るのが、いいセミナー
とされているので、これとは大きく異なります。

ただ、不思議なことに、すごい手応えはなかったはずなのに、
参加者の表情はすっきりしていました。
「これが大事だ」という気持ちになったそうです。

皆さん、現代社会の中で、頑張って成果を出してきた方々です。
これまで成長のために、マネジメント、リーダーシップ、コーチング、
論理思考、PDCAなど、様々な能力開発のセミナーを受けてこられて、
どれも効果はあったという話でした。

今回のセミナーは、今まで受けたセミナーの中で
一番よく分からないし、なかなか上手く出来なかったそうです。

禅は上手くできない。上手く出来ないからいい。

私はこの視点を忘れていました。自分が一番出来ないくせに、
それは分かっていたからこそ、今回の講座を開催しようと
思ったのです。

余分なものをかなり削ぎ落としたと思っていましたが、
まだどこかで少しは出来ていると思いたい自分、
少しだけ格好つけたい自分がいたのです。
それを、他の参加者の方に気づかされました。

暫定的に講座名を「禅リーダーシップ講座」としていましたが、
今回の参加者の反応を拝見して、もっと基本中の基本から
スタートすることが大事だと思いました。

私をふくめ「超初心者のための禅入門」くらいが丁度良いかと。
それならば、いつも原点の心で、もっと自然に皆さんと
学んでいけるような気がします。

次回も地味に続けていこうと思います。