夏のこの時期は、受験生のメンタルトレーニングに駆け回っています。
主に、医学部を志望する受験生、そしてその保護者にむけてのメンタルの持ち方についてお伝えしています。
医学部は、今日本の大学の中でも、最難関とのいえるかなりの狭き門になっています。しかも受験は孤独な戦いなので、相当な精神力が必要とされます。
受験生のメンタルトレーニングも、アスリートのメンタルトレーニングと共通点が多くあります。日々の勉強へのモチベーションの維持、そしていかに得意なものを伸ばし、苦手なものを克服していくか。思考力、直感力、記憶力を磨くことも大事になってきます。
また、本番では、また、緊張した中で、いかに平常心を保ち、自分の実力をいかに発揮するか。
高い目標に挑むほど、不安や葛藤は増えます。思うようにならない中で、何を心の拠り所にしていくか。年単位の挑戦は、一時のテンションだけでは、乗り越えられない壁です。
さまざまな課題を抱える中で、必ず最初にお伝えするのが、「不安でいい」ということです。不安というのは、高い目標や期待があるからこそ、起こるものです。受験生だけでなく、保護者もふくめ、まずは不安を否定しないことです。
一番、心に良くない影響を与えるのは、「不安」や「緊張」ではなく、実は「否定」です。人は上手くいかないと、否定したくなるもの。否定で一瞬、気持ちが楽になるかもしれませんが、否定は少しずつ心を傷つけていきます。
否定という傷は、少しずつ自分への信頼を奪っていきます。
自信をなくした状態というのは、思うような結果が出ないということで起こると思いがちですが、さまざまな受験生やアスリートを見てきて、自分を否定する傾向が強い人ほど、自信の喪失が早くて、深い。要は、打たれ弱いのです。こうなると、立ち直るのに多くの時間とパワーが必要になります。
誰でも、失敗は必ずありますし、上手くいかないことも必ずあります。目標を達成するために大事なことは、いかに失敗せず上手くやるかではなく、上手くいかないときにどれだけ自分を励ませるか。必要以上に自分を責めて批判するのではなく、応援できるか。
1回こけて1回立ち上がることは多くの人が出来るでしょう。しかし、これが5回となればどうでしょう。10回となれば、多くの人が諦めてしまうかもしれません。私がコーチとして出来ることは、失敗しないようにサポートすることではなく、こけたときに、立ち上がるための勇気を持ってもらうことが仕事だと思っています。
失敗したら、余計なことは考えず、ただ立ち上げればいいのです。
それが、受験でもスポーツでも、そして人生においてもっとも大切な、「打たれ強さ」になっていきます。